LaTeX作例2(かっこの大きさを自動調節、3.2.1)
- 量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
- ポイントとしては、筆記体のL,Hが登場します。少し特殊なフォントみたいで、本に書いてあった形と同じものを探すのに結構苦労しました。花文字とかいうフォントだったと思います
- ディラックのブラ・ケットベクトルも登場します
- 式(3.33)では、[]を
\left[
\right] とすることで、中身の大きさに合わせて大きさを自動調節してくれるようにしています
- プリアンブルは全部コピペして使ってるので、かなり余計なものも混ざってます。すいません
- パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
- ページ番号は原典と異なります
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『新しい量子化学―電子構造の理論入門』
出版社 : 東京大学出版会 (1987/7/1) - 発売日 : 1987/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 303ページ
- ISBN-10 : 4130621114
- ISBN-13 : 978-4130621113
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[http://:title]
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\documentclass{jsarticle}
\usepackage{mathrsfs}
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
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\usepackage{amsmath,amssymb}
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\usepackage{calrsfs}
\usepackage{mathrsfs}
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\begin{document}
\subsection*{3.2 Hartree-Fock方程式の導出}
\parindent=1zw
この節では、Hartree-Fock方程式を一般的なスピン軌道に対する方程式として導出する。すなわち、1個のSlater行列式についてのエネルギー表式を極小化することによって固有値方程式(3.17)を導く。この導出では、スピン軌道について何ら設定を設けていない。あとで、計算機で解くときに便利な代数方程式(行列方程式)にするために、スピン軌道を制限つきと非制限の場合に分け、また基底関数系を導入する。ここでは、一般的な微積分方程式(Hartree-Fock固有値方程式)を導き、この方程式とその解の性質についての考察のみを行う。方程式を導出するにあたっては、一般的かつ有用な汎関数変分の手法を使う。
\subsubsection*{3.2.1 汎関数変分}
\parindent=1zw
任意の試行関数$\widetilde{\sl \Phi}$が与えられたとき、ハミルトニアン演算子$\mathcal{H}$の期待値$E[\widetilde{\Phi}]$は
$$E[\widetilde{\Phi}] = \bra{\widetilde{\Phi}}\mathcal{H}\ket{\widetilde{\Phi}}\eqno(3.24)$$
で与えられる。期待値は関数$\widetilde{\Phi}$の形に依存しているので、$E[\widetilde{\Phi}]$は$\widetilde{\Phi}$の汎関数であるという。つまり値$E$は、独立変数にではなくてある関数の形($\widetilde{\Phi}$)に依存している。たとえば、$\widetilde{\Phi}$が依存しているパラメータを変えて、$\widetilde{\Phi}$を任意の微小量だけ変えるとしよう。すなわち、
$$\widetilde{\Phi}\to\widetilde{\Phi}+\delta\widetilde{\Phi}\eqno(3.25)$$
とする。これによってエネルギーは、
\begin{flalign*}
&&E[\widetilde{\Phi}+\delta\widetilde{\Phi}] \: &=\bra{\widetilde{\Phi}+\delta\widetilde{\Phi}}\mathcal{H}\ket{\widetilde{\Phi}+\delta\widetilde{\Phi}}&\\
&& &=E[\widetilde{\Phi}]+\{\bra{\delta\widetilde{\Phi}}\mathcal{H}\ket{\widetilde{\Phi}}+\bra{\widetilde{\Phi}}\mathcal{H}\ket{\delta\widetilde{\Phi}}\}+\cdots&\\
&& &=E[\widetilde{\Phi}]+\delta E+\cdots&\text{(3.26)}
\end{flalign*}
となる。ここで、$\delta E$は変分$\delta\widetilde{\Phi}$について一次(線形)であるすべての項を含み、$E$の第1変分と呼ばれる。“$\delta$”をあたかも微分演算子のように扱えることに注意しよう。つまり、$\delta\bra{\widetilde{\Phi}}\mathcal{H}\ket{\widetilde{\Phi}}=\bra{\widetilde{\Phi}}\mathcal{H}\ket{\delta\widetilde{\Phi}}$である。変分法においては、$E[\widetilde{\Phi}]$が極小となるような$\widetilde{\Phi}$を探す。いいかえると、$E[\widetilde{\Phi}]$における第一変分がゼロになる、すなわち
$$\delta E=0\eqno(3.27)$$
となるような$\widetilde{\Phi}$を見つけたい。この条件は、$\widetilde{\Phi}$の任意の変分に関して$E$が停留値をとることだけを保障している。しかしながら、ふつうは停留点が極小にもなっている。
\parindent=1zw
1.3.2節に与えられている線形変分問題の行列固有値方程式を再び導出することによって、変分法の手法を具体的に示そう。線形変分の試行関数
$$\ket{\widetilde{\Phi}}=
\sum\limits_{i=1}^{N}c_i\ket{\Psi_i}\eqno(3.28)$$
が与えられたとき、エネルギー
$$E=\bra{\widetilde{\Phi}}\mathcal{H}\ket{\widetilde{\Phi}}=\sum\limits_{ij}c_i^*c_j\bra{\Psi_i}\mathcal{H}\ket{\Psi_j}\eqno(3.29)$$
を、試行関数が規格化されている、すなわち
$$\braket{\widetilde{\Phi}|\widetilde{\Phi}}-1=\sum\limits_{ij}c_i^*c_j\braket{\Psi_i|\Psi_j}-1=0\eqno(3.30)$$
という制約を課しながら、極小化するものとする。そのために、1章で述べたLagrangeの未定乗数法を使って、つぎの汎関数
\begin{flalign*}
&&\mathcal{L}&=\braket{\widetilde{\Phi}|\mathcal{H}|\widetilde{\Phi}}-E(\braket{\widetilde{\Phi}|\widetilde{\Phi}}-1)&\\
&& &=\sum\limits_{ij}c_i^*c_j\braket{\Psi_i|\mathcal{H}|\Psi_j}-E(\sum\limits_{ij}c_i^*c_j\braket{\Psi_i|\Psi_j}-1)&\text{(3.31)}
\end{flalign*}
を係数$c_i$について極小化する。ここで、$E$がLagrangeの乗数である。そのために、$\mathcal{L}$の第1次変分をゼロに置く。
\begin{flalign*}
&&\delta\mathcal{L}=&\sum\limits_{ij}\delta c_i^*c_j\braket{\Psi_i|\mathcal{H}|\Psi_j}-E\sum\limits_{ij}\delta c_i^*c_j\braket{\Psi_i|\Psi_j}&\\
&& &+\sum\limits_{ij}c_i^*\delta c_j\braket{\Psi_i|\mathcal{H}|\Psi_j}-E\sum\limits_{ij}c_i^*\delta c_j\braket{\Psi_i|\Psi_j}=0&\text{(3.32)}
\end{flalign*}
$E$が実数($\mathcal{L}$も実数)なので、項をまとめて添字を交換すると
$$\sum\limits_i\delta c_i^*\left[ \sum\limits_jH_{ij}c_j-ES_{ij}c_j\right]+ {\rm complex\; conjugate} =0\eqno(3.33)$$
を得る。ここで、$H_{ij}=\braket{\Psi_i|\mathcal{H}|\Psi_j}$である。ここでは線形展開に使う基底関数$\ket{\Psi_i}$は規格直交ではなくて
$$\braket{\Psi_i|\Psi_j}=S_{ij}\eqno(3.34)$$
という重なりをもつとしている。$\delta c_i^*$は任意($c_i^*$と$c_i$は両方とも独立な変数である)なので、式(3.33)の四角括弧の中の量がゼロにならなければならない。すなわち
\begin{flalign*}
&&\sum\limits_jH_{ij}c_j&=E\sum\limits_jS_{ij}c_j&\\
&&\bm{Hc}&=E\bm{Sc}&\text{(3.35)}
\end{flalign*}
が得られる。本質的に同じ結果($\bm{S}=\textit{\textbf{1}}$で係数が実数の場合)が1.3.2節ですでに得られている。したがって、汎関数変分は係数を微分して得られたのと同じ結果を与える。しかしながら、汎関数変分はより一般的な手法なので、これを使ってHartree-Fock方程式を導出していこう。
\end{document}