Master3’s blog

LaTeXやExcelVBAなどの作例集

LaTeX作例5(ノットイコール、3.3.1)

  • 量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
  • ポイントとしては、筆記体のJが登場します。少し特殊なフォントみたいで、本に書いてあった形と同じものを探すのに結構苦労しました。花文字とかいうフォントだったと思います
  • 式中の文字と変数は、ローマン体と斜体で区別します。式(3.87)を見てみてください
  • プリアンブルは全部コピペして使ってるので、かなり余計なものも混ざってます。すいません
  • パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
  • ページ番号は原典と異なります
  • 『新しい量子化学―電子構造の理論入門』

    出版社 ‏ :  東京大学出版会 (1987/7/1)
  • 発売日 ‏ :  1987/7/1
  • 言語 ‏ :  日本語
  • 単行本 ‏ :  303ページ
  • ISBN-10 ‏ :  4130621114
  • ISBN-13 :  978-4130621113
  • [http://:title]

    3.3.1改訂版.tex - Google ドライブ

  • \documentclass{jsarticle}

    \usepackage{mathrsfs}

    \usepackage[dvipdfmx]{graphicx}

    \usepackage{parskip}

    \usepackage{indentfirst}

    \usepackage{amsmath,amssymb}

    \usepackage{braket}

     

    \usepackage{calligra}

    \usepackage{calrsfs}

    \usepackage{mathrsfs}

     

    \usepackage{bm}

    \begin{document}

     

    \subsection*{3.3 Hartree-Fock方程式の解釈}

    \parindent=1zw

    Hartree-Fock方程式を解くためには、基底関数系を導入し行列方程式の組を解かねばならない。しかしながらこれを行う前に、この固有値方程式とその解の基底関数に依存しない特徴について議論しておくことが適当であろう。

    \subsubsection*{3.3.1 軌道エネルギーとKoopmansの定理}

    \parindent=1zw

    $N$電子系に対して、行列式$\ket{\Psi_0}=\ket{\chi_1\chi_2\cdots\chi_a\chi_b\cdots\chi_N}$のエネルギーを極小化することによって、$N$個の占有スピン軌道$\{\chi_a\}$に対する固有値方程式$f\ket{\chi_a}=\varepsilon_a\ket{\chi_a}$が得られる。Fock演算子は占有スピン軌道を含んでいるが、ひとたび占有スピン軌道が決まれば、 Fock演算子は無限個の固有値を有するエルミート演算子として明確に定義される。すなわち

    $$f\ket{\chi_j}=\varepsilon_j\ket{\chi_j}\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;j=1,\;2,\cdots,\infty\eqno(3.70)$$

    である。

     

    \hrulefill

     

    \parindent=1zw

    式(3.70)の解$\ket{\chi_j}$はスピン軌道エネルギー$\varepsilon_j$をもつ。エネルギーの低い方から$N$個のスピン軌道が$\ket{\Psi_0}$の中で占有され、これらのスピン軌道に対して、添字$a,\;b,\;\cdots$を用いる。より高いエネルギーをもった残りの無限個のスピン軌道が仮想あるいは非占有スピン軌道であって、これに対しては添字$r,\;s,\;\cdots$を用いる。ここでのおもな興味は、軌道エネルギー$\varepsilon_a$と$\varepsilon_r$に対する表式を導き、これらの軌道エネルギーの物理的意味を調べることである。

     

    \parindent=1zw

     

    式(3.70)に$\bra{\chi_i}$をかけると、スピン軌道固有関数の基底の張る空間におけるFock演算子の行列表現が、軌道エネルギーを対角要素としてもった対角形になることが示せる。

    $$\braket{\chi_i|f|\chi_j}=\varepsilon_j\braket{\chi_i|\chi_j}=\varepsilon_j\delta_{ij}\eqno(3.71)$$

    Fock演算子についての表式(3.16)を使うと、軌道エネルギーは

    \begin{flalign*}

    &&\varepsilon_i&=\braket{\chi_i|f|\chi_i}=\braket{\chi_i|h+\sum\limits_b(\mathcal{J}_b-\mathcal{K}_b)|\chi_i}&\\

    && &=\braket{\chi_i|h|\chi_i}+\sum\limits_b\braket{\chi_i|\mathcal{J}_b|\chi_i}-\braket{\chi_i|\mathcal{K}_b|\chi_i}&\\

    && &=\braket{i|h|i}+\sum\limits_b\braket{ib|ib}-\braket{ib|bi}&\\

    && &=\braket{i|h|i}+\sum\limits_b\braket{ib||ib}&\text{(3.72)}

    \end{flalign*}

    と表現できる。ここで、交換演算子とクーロン演算子に対する式(3.10)と式(3.11)の定義から得られる関係

    $$\braket{\chi_i|\mathcal{J}_k|\chi_j}=\braket{ik|jk}=[ij|kk]\eqno(3.73)$$

    $$\braket{\chi_i|\mathcal{K}_k|\chi_j}=\braket{ik|kj}=[ik|kj]\eqno(3.74)$$

    を用いている。占有スピン軌道と非占有スピン軌道に分けて書くと

    $$\varepsilon_a=\braket{a|h|a}+\sum\limits_{b=1}^N\braket{ab||ab}\eqno(3.75)$$

    $$\varepsilon_r=\braket{r|h|r}+\sum\limits_{b=1}^N\braket{rb||rb}\eqno(3.76)$$

    である。さて

    $$\braket{aa||aa}=0\eqno(3.77)$$

    であるので、これらの結果を

    $$\varepsilon_a=\braket{a|h|a}+\sum\limits_{b\neq a}\braket{ab|ab}-\braket{ab|ba}\eqno(3.78)$$

    $$\varepsilon_r=\braket{r|h|r}+\sum\limits_{b}\braket{rb|rb}-\braket{rb|br}\eqno(3.79)$$

    と書き直すことができる。最後に得られたこの2つの表式を調べてみよう。軌道エネルギー$\varepsilon_a$はスピン軌道$\ket{\chi_a}$に入っている1個の電子のエネルギーを表現している。式(3.78)から、このエネルギーは運動エネルギーと核からの引力($\braket{a|h|a}$)に、$b\neq a$であるような$N-1$個のスピン軌道$\ket{\chi_b}$に入っている他の$(N-1)$個の電子のおのおのとのクーロン相互作用($\braket{ab|ab}$)と交換相互作用($-\braket{ab|ba}$)を加えたものである。以前に見たように、積分$\braket{ab|ba}$は$\ket{\chi_a}$と$\ket{\chi_b}$に入っている電子のスピンが平行であるときのみゼロではない。ここに与えられている一般的なスピン軌道を使った定式化においては、電子のスピンを特定していないので、すべての電子間相互作用に対して積分$\braket{ab|ba}$が残っている。実際にはこれらの積分のうちのいくつかはスピンの直交性でゼロになる。

     

    $\varepsilon_a$に対する結果は予期できるものであったが、仮想スピン軌道エネルギー$\varepsilon_r$に対する表式(3.79)は違った性質をもっている。こちらは、$\ket{\chi_r}$に入っている1個の電子の運動エネルギーと核からの引力、すなわち$\braket{r|h|r}$を含んでおり、Hartree-Fock基底状態$\ket{\Psi_0}$の$N$個すべての電子、すなわち$\{\chi_b|b=1,\;2,\;\cdots,\;N\}$のスピン軌道に入っている$N$個の電子とのクーロン相互作用($\braket{rb|rb}$)と交換相互作用($-\braket{rb|br}$を含んでいる。これは、あたかも1個の電子が$\ket{\Psi_0}$に加えられて、1つの$(N+1)$電子系ができ、$\varepsilon_r$はこの加えられた電子のエネルギーを表現しているかのようである。実はまさにそのとおりになっている。Koopmansの定理を述べるときに話をこの点に戻すことにして、まず、占有軌道エネルギー$\varepsilon_a$ と全エネルギー$E_0$の関係を求めよう。

     

    基底状態にある$N$個の電子に対する式(3.75)の軌道エネルギーを単に加え合わせると

    $$\sum\limits_a^N\varepsilon_a=\sum\limits_a^N\braket{a|h|a}+\sum\limits_a^N\sum\limits_b^N\braket{ab||ab}\eqno(3.80)$$

    を得る。この状態に対する正しい期待値$E_0=\braket{\Psi_0|\mathcal{H}|\Psi_0}$は式(2.112)から

    $$E_0=\sum\limits_a^N\braket{a|h|a}+\frac{1}{2}\sum\limits_a^N\sum\limits_b^N\braket{ab||ab}\eqno(3.81)$$

    と書ける。したがって

    $$E_0\neq\sum\limits_a^N\varepsilon_a\eqno(3.82)$$

    は明らかで、状態$\ket{\Psi_0}$の全エネルギーと軌道エネルギーの和とは等しくない。その理由は以下のとおりである。エネルギー$\varepsilon_a$は、$\chi_a$に入っている1個の電子と他のすべての占有スピン軌道(たとえば$\chi_b$)に入っている電子とのクーロン相互作用と交換相互作用を含んでいるが、$\varepsilon_b$は、$\chi_b$に入っている1個の電子と他のすべての占有スピン軌道(たとえば$\chi_a$)に入っている電子とのクーロン相互作用と交換相互作用を含んでいる。したがって、$\varepsilon_a$と$\varepsilon_b$を加え合わせると、$\chi_a$に入っている1電子と$\chi_b$に入っている1電子との電子間相互作用を2回勘定してしまっていることになる。軌道エネルギーの和は電子間相互作用を2重に数えているわけである。これが、式(3.80)の軌道エネルギーの和と違って、全エネルギーに対する正しい表式(3.81)に因子1/2があらわれる理由である。

     

    全エネルギーが軌道エネルギーの和でなければ、軌道エネルギーに与えることのできる物理的意味は何であろうか。その答は、$N$電子状態$\ket{\Psi_0}=\ket{^N\Psi_0}=\ket{\chi_1\chi_2\cdots\chi_c\cdots\chi_N}$に1個の電子を加えたり取り除いたりする過程を調べてみると明らかになる。スピン軌道$\chi_c$から1個の電子を除いて$N-1$電子の1個の行列式であらわされる状態$\ket{^{N-1}\Psi_c} =\ket{\chi_1\chi_2\cdots\chi_{c-1}\chi_{c+1}\cdots\chi_N}$をつくったとしよう。ここで$\ket{^{N-1}\Psi_c}$の中に残った$N-1$個のスピン軌道は$\ket{^{N}\Psi_0}$の中のものと同じである。第2量子化においては、この過程は$\chi_c$に入っている1個の電子を消滅させることによって達成される。すなわち、符号の違いは無視するとして

    $$\ket{^{N-1}\Psi_c}=a_c\ket{^N\Psi_0}\eqno(3.83)$$

    と書ける。この過程に対する$\ket{^N\Psi_0}$のイオン化ポテンシャル(IP)は

    $${\rm IP}=^{N-1}E_c-^NE_0\eqno(3.84)$$

    で与えられる。ここで、$^{N-1}E_c$と$^NE_0$は問題となっているおのおの1個の行列式によるエネルギーの期待値である。

    $$^NE_0=\braket{^N\Psi_0|\mathcal{H}|^N\Psi_0}\eqno(3.85)$$

    $$^{N-1}E_0=\braket{^{N-1}\Psi_0|\mathcal{H}|^{N-1}\Psi_0}\eqno(3.86)$$

    状態$\ket{^{N-1}\Psi_c}$がイオンの基底状態であるかどうかは、電子を取り除くスピン軌道$\chi_c$に依存する。$\ket{^{N-1}\Psi_c}$は$\ket{^N\Psi_0}$とは異なる状態なので、イオン状態に対する最適なスピン軌道が$\ket{^N\Psi_0}$のものと等しいと期待することはできない。しかし、もし両状態に対するスピン軌道が等しいと仮定すると、2つの状態間のエネルギー差を計算することができる。前章の規則から、1個の行列式のエネルギーは

    $$E=\sum\limits_i^{\rm occ}\braket{i|h|i}+\frac{1}{2}\sum\limits_i^{\rm occ}\sum\limits_j^{\rm occ}\braket{ij||ij}\eqno(3.87)$$

    であって、和は行列式を占有しているすべてのスピン軌道について取る。したがって

    $$^NE_0=\sum\limits_a\braket{a|h|a}+\frac{1}{2}\sum\limits_a\sum\limits_b\braket{ab||ab}\eqno(3.88)$$

    である。ここで、添字$a,\;b,\;\cdots$は$\ket{^N\Psi_0}$で占有されているスピン軌道を示している。同じ規則を使って

    $$^{N-1}E_c=\sum\limits_{a\neq c}\braket{a|h|a}+\frac{1}{2}\sum\limits_{a\neq c}\sum\limits_{b\neq c}\braket{ab||ab}\eqno(3.89)$$

    を得る。イオン化ポテンシャルはこれら2つの結果の間の差である。

    \begin{flalign*}

    &&{\rm IP}&=^{N-1}E_c-^NE_0&\\

    && &=-\braket{c|h|c}-\frac{1}{2}\sum\limits_{a[b\equiv c]}\braket{ab||ab}-\frac{1}{2}\sum\limits_{b[a\equiv c]}\braket{ab||ab}&\\

    && &=-\braket{c|h|c}-\frac{1}{2}\sum\limits_{a}\braket{ac||ac}-\frac{1}{2}\sum\limits_{b}\braket{cb||cb}&\\

    && &=-\braket{c|h|c}-\sum\limits_b\braket{cb||cb}&\text{(3.90)}

    \end{flalign*}

    これを占有スピン軌道の軌道エネルギーに対する定義式(3.75)と比べてみると、$\chi_c$から1個の電子を取り除くためのイオン化ポテンシャルはちょうど軌道エネルギー$\varepsilon_c$の符号を変えたものになっていることがわかる。

    $${\rm IP}=^{N-1}E_c-^NE_0=-\varepsilon_c\eqno(3.91)$$

    したがって、1個の行列式による近似においては、占有スピン軌道のエネルギーは、その軌道から電子を取り除くのに必要なエネルギー(符号は反対)をあらわしていることになる。占有軌道の軌道エネルギー$\varepsilon_a$はふつう負で、イオン化ポテンシャルは正である。

     

    \hrulefill

     

    さて、仮想スピン軌道$\chi_r$に電子を入れて$(N+1)$電子系の1個の行列式$\ket{^{n+1}\Psi^r}=\ket{\chi_r\chi_1\chi_2\cdots\chi_N}$をつくる過程を考えよう。ここで再び、他のスピン軌道は$\ket{^{N}\Psi_0}$の中のものと等しいとする。第2量子化においては、この過程は$\chi_r$の中に1個の電子を生成させることで実現される。

    $$\ket{^{N+1}\Psi^r}=a_r^\dagger\ket{^N\Psi_0}\eqno(3.92)$$

    この過程に対する$\ket{^N\Psi_0}$の電子親和力(EA)は

    $${\rm EA}=^NE_0-^{N+1}E^r\eqno(3.93)$$

    である。ここで$^{N+1}E^r$は1個の行列式$\ket{^{N+1}\Psi^r}$のエネルギーである。

    $$^{N+1}E^r=\braket{^{N+1}\Psi^r|\mathcal{H}|^{N+1}\Psi^r}\eqno(3.94)$$

     

    イオン化過程と同じように、一般的には$(N+1)$電子系を1個の行列式であらわすとき、最適なスピン軌道は$\ket{^N\Psi_0}$のスピン軌道とは等しくない。しかしながら、これらが等しいと仮定すれば電子親和力を容易に計算することができる。

     

    \hrulefill

     

    Exercise3.6の結果と式(3.76)から、仮想スピン軌道$\chi_r$に1個の電子を加える過程の電子親和力は、ちょうどその仮想スピン軌道の軌道エネルギーの符号を変えた値になっている、すなわち

    $${\rm EA}=^NE_0-^{N+1}E^r=-\varepsilon_r\eqno(3.95)$$

    であることがわかる。この結果は、$\varepsilon_r$が基底状態$\ket{^N\Psi_0}$の他のすべての$N$電子との相互作用を含み、$(N+1)$番目の電子を記述しているという前出の見方と合致する。$\varepsilon_r$を負(すなわち、$\ket{^{N+1}\Psi^r}$が$\ket{^N\Psi_0}$よりも安定)とすると、電子親和力は正になる。

     

    上の結果は、最初にKoopmansによって得られたものである。ここでKoopmansの定理を改めて述べておこう。

    \begin{description}

    \item[Koopmansの定理]占有軌道エネルギー$\varepsilon_a$、仮想軌道エネルギー$\varepsilon_r$をもった$N$電子系の1個のHartree-Fock行列式が与えられたとき、スピン軌道$\chi_a$から1個の電子を取り除いて、残りはもとのままのスピン軌道からなる$(N-1)$電子1個の行列式$\ket{^{N-1}\Psi_a}$をつくるときのイオン化ポテンシャルは$-\varepsilon_a$、また、スピン軌道$\chi_r$に1個の電子を入れるが他の軌道はもとのままの$(N+1)$電子系の1個の行列式をつくるときの電子親和力は、$-\varepsilon_r$である。

    \end{description}

     

    Koopmansの定理はイオン化ポテンシャルと電子親和力を近似的に計算する方法を与えてくれる。ここで用いられた“固定軌道”近似とは、$(N\pm 1)$電子系の状態(もし$N$電子状態$\ket{^N\Psi_0}$が中性だとすると正イオンまたは負イオンにあたる状態)のスピン軌道が、$N$電子系のスピン軌道と同一であると仮定するものである。この近似は$(N\pm 1)$電子状態におけるスピン軌道の変化、つまり、$\ket{^N\Psi_0}$のスピン軌道は$\ket{^{N-1}\Psi_a}$または$\ket{^{N+1}\Psi^r}$に対する最適なスピン軌道ではないということを無視している。$(N\pm 1)$電子系に対して別々にHartree-Fock計算を行うことによって、$(N\pm 1)$電子系を1個の行列式で近似して、そのスピン軌道を最適化するとエネルギー$^{N-1}E_a$と$^{N+1}E^r$はより低くなる。したがって、Koopmansの定理においてスピン軌道の変化を無視していることは、イオン化ポテンシャルの値を過大に見積り、電子親和力の値を過小に見積る傾向を生じる。もちろんそれに加えて、1個の行列式による波動関数の近似も誤差をもたらしており、Hartree-Fock近似を越えることによって得られる電子相関の効果は、Koopmansの定理による結果をさらに補正することになる。相関エネルギーは電子の数が多いほど大きくなるので、スピン軌道の変化を無視したことによるイオン化ポテンシャルの誤差を相関効果は打ち消す傾向をもつが、電子親和力に対する同様の誤差に対しては上乗せしてしまう傾向をもつ。一般的には、Koopmansのイオン化ポテンシャルは実験値に対する第1近似としては妥当な値を与え、この章の後半でもそういった計算がいくつか議論されている。Koopmansの電子親和力は残念なことに良好な近似となることは少ない。多くの中性分子では1個の電子が加えられると安定な負イオンを生じる。ところが、中性分子におけるHartree-Fock計算では、ほとんどつねにすべての仮想軌道が正の軌道エネルギーをもつ。電子親和力はイオン化ポテンシャルに比べて計算がかなり難しく、この本においてはこれ以上電子親和力を取り扱わないことにする。

     

    \end{document}