LaTeX作例20(3.6.3 2倍基底関数系:4-31G)
- 量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
- ポイントとしては、複数行の式をイコールの位置でそろえて記述しているところです。
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\text( )コマンドを用いることで、数式に任意の式番号を割り振ることができます
- プリアンブルは全部コピペして使ってるので、かなり余計なものも混ざってます。すいません
- パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
- ページ番号は原典と異なります
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『新しい量子化学―電子構造の理論入門』
出版社 : 東京大学出版会 (1987/7/1) - 発売日 : 1987/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 303ページ
- ISBN-10 : 4130621114
- ISBN-13 : 978-4130621113
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\documentclass{jsarticle}
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\begin{document}
\subsection*{3.6.3 2倍基底関数系:4-31G}
\parindent=1zw
最小基底関数系を使って行う変分計算の自由度はもともとかなり制限されたものだが、これは軌道指数の最適化が行われていなければ特に著しい。最小基底関数の改良の第1段階は、最小基底関数のおのおのに対して2個の関数を使い、2倍基底関数系とすることである。2個の基底関数の最良の軌道指数は、最小基底関数の最適値よりも、1つは少し大きめに、もう1つは少し小さめになるのがふつうである。これによって、非線形な軌道指数を変化させなくても、線形パラメターの変分によって、基底関数が分子内で実質的に広がったり“縮ん”だりすることが可能になる。SCFの手続を行えば、分子環境により実際の軌道が広がるべきか“縮む”べきかに従って、広がった成分と縮んだ成分の係数の重みが変わる。これに加えて、たとえば異なる方向を向いた$p$軌道が異なった大きさをもちうるので、STO-3G基底にない異方性を表現できるような自由度も与えられている。
4-31G基底関数は、原子価殻の関数だけが2倍になり、各内殻軌道に対しては1個の関数のままなので、正確には2倍基底関数ではない。これは、2倍原子価殻基底関数とも呼ばれている。内殻は化学的な性質にはほとんど寄与しないし、異なる分子内でもごくわずかしか変化しないのがふつうである。内殻を分割しないことは、全エネルギーに若干の影響を与えるものの、双極子能率、原子価電子のイオン化ポテンシャル、電荷密度、解離エネルギーなど化学的に興味あるほとんどの量に与える影響はごくわずかである。4-31G基底は、HとHeに対しては2個の関数、LiからNeまでの原子に対しては9個、NaからArまでの原子に対しては13個、$\cdots$の関数からなっている。水素に対する短縮は
\begin{flalign*}
&&\phi_{1s}'(\bm{r})&=\sum_{i=1}^3d'_{i,1s}g_{1s}(\alpha'_{i,1s},\bm{r})&\text(3.298)\\
&&\phi_{1s}''(\bm{r})&=g_{1s}(\alpha''_{1s},\bm{r})&\text(3.299)\\
\end{flalign*}
である。
上に見るように、水素の外側の関数は短縮されておらず、内側の関数は3個の原始Gauss型関数の短縮となっている。短縮係数と短縮指数の値を決める方法の小さな差を別にすれば、上記の基底関数は式(3.288)と式(3.289)の$(4s)/[2s]$関数と同じものである。すなわち、4-31G基底は、ある特定の関数に対する最適化を行ったものではなく、短縮の形を決めてから短縮係数と短縮指数を変化させ原子のエネルギーを極小化することによって導かれる。4-31Gの記号は、原子価殻の関数が3項の原始Gauss型関数(内側の原子価殻関数として)の短縮と1項の原始Gauss型関数(外側の原子価殻関数として)からなり、かつ内殻の関数は4項のGauss型関数の短縮であることを意味している。水素が内殻をもたないのはいうまでもない。
LiからFまでに対する短縮は
\begin{flalign*}
&&\phi_{1s}(\bm{r})&=\sum_{i=1}^4d_{i,1s}g_{1s}(\alpha_{i,1s},\bm{r})&\text(3.300)\\
&&\phi'_{2s}(\bm{r})&=\sum_{i=1}^3d'_{i,2s}g_{1s}(\alpha'_{i,2sp},\bm{r})&\text(3.301)\\
&&\phi''_{2s}(\bm{r})&=g_{1s}(\alpha''_{i,2sp},\bm{r})&\text(3.302)\\
&&\phi'_{2p}(\bm{r})&=\sum_{i=1}^3d'_{i,2p}g_{2p}(\alpha'_{i,2sp},\bm{r})&\text(3.303)\\
&&\phi''_{2p}(\bm{r})&=g_{2p}(\alpha''_{i,2sp},\bm{r})&\text(3.304)\\
\end{flalign*}
である。
STO-3G基底の場合と同じように、積分計算の効率を上げるために$2s$と$2p$の関数で軌道指数が同じになっている。上記の関数形が決まると、短縮係数$d_{1s},\;d'_{2s},\;d''_{2s},\;d'_{2p},\;d''_{2p}$と短縮指数$\alpha_{1s},\;\alpha'_{2sp},\;\alpha''_{2sp}$が原子のSCF計算のエネルギーが極小に達するように変分される。既知のSlater関数に対し最小2乗法による最適化を行って得られたSTO-3G基底、あるいはあらかじめ求めておいた非短縮の原子の計算結果を短縮するといった一般的な短縮方法とは違って、4-31G基底関数は式(3.300)から式(3.304)までの特定の短縮形を選んでから、すべての短縮パラメターを短縮することによって決められる。したがって、この基底は、まず最適化を行ってから短縮を行うのとは逆に、まず短縮を行ってから最適化したものである。一般的な記法で書くと、4-31Gの短縮は$(8s\;4p/4s)/[3s\;2p/2s]$と書ける。もう一度繰り返すと、この基底関数は、内殻の関数、内側の原子価殻関数および外側の原子価殻関数からなり、それぞれは4、3および1個の原始関数を短縮したものである。
基底関数系が原子の計算から決められるので、やはり分子環境に応じて軌道指数をスケールすることが望ましい。これは、内側の原子価関数のスケール因子$\zeta'$と外側の原子価関数のスケール因子$\zeta''$を決め、これらの因子の2乗をおのおの内側と外側の指数に乗ずればよい。原子価殻のみがスケールされるのである。表3.9には標準的な4-31Gスケール因子の組が与えられている。値が1と大きく違っているのはHに対してだけである。他に目につくのは、炭素の外側の原子価殻関数が原子よりも縮まっていることである。
\hrulefill
\end{document}
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