LaTeX作例21(3.6.4 分極基底関数系:6-31G*および6-31G**)
- 量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
- ポイントとしては、
\hrulefill
コマンドを用いて、ページに仕切り線を挿入しているところです - プリアンブルは全部コピペして使ってるので、かなり余計なものも混ざってます。すいません
- パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
- ページ番号は原典と異なります
-
『新しい量子化学―電子構造の理論入門』
出版社 : 東京大学出版会 (1987/7/1) - 発売日 : 1987/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 303ページ
- ISBN-10 : 4130621114
- ISBN-13 : 978-4130621113
-
[http://:title]
-
\documentclass{jsarticle}
\usepackage{mathrsfs}
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
\usepackage{parskip}
\usepackage{indentfirst}
\usepackage{amsmath,amssymb}
\usepackage{braket}
\usepackage{calligra}
\usepackage{calrsfs}
\usepackage{mathrsfs}
\usepackage{bm}
\usepackage{okumacro}
\begin{document}
\subsection*{3.6.4 分極基底関数系:6-31G*および6-31G**}
\parindent=1zw
基底関数を改良するつぎの段階は、3倍、4倍、$\cdots$などと殻を分割していくことであろう。しかし、より大きい方位量子数をもった関数を加えないでこの分割を進めていくと、基底関数のバランスが失われてしまう。たとえば$s$関数と$p$関数だけを使って関数を増やしていった極限では、アンモニアの平衡核配置が計算上は平面になってしまうといったことが起きる。基底関数を2倍にした後の改良段階としては、分極関数を加えるのがふつうである。すなわち、LiからFまでの第1周期原子に$d$型の関数、Hに対しては$p$型の関数を加える。これらがなぜ分極関数と呼ばれるかを知るために、水素原子を考えよう。孤立した水素原子に対する正確な波動関数は1
$s$軌道である。しかしながら、水素原子が一様な電場の中に置かれたとすると、電子雲は電場の方向に引き寄せられて、核のまわりの電荷分布は球対称ではなくなる。つまり、水素原子は電場によって分極する。この問題に対する最も簡単な解は、もとの1$s$軌道と$p$型関数との線形結合をつくることである。この解は混成軌道と見なすこともできよう。分子中の水素原子も、球対称でない環境から生じる一様でない電場を感じている。この効果を取り込むためには、分極関数を加える、つまりHに対する基底関数に$p$型関数を加えればよい。同様にして、第1周期の原子では、占有されていない$d$型の関数が、LiからFまでの原子に対して、分極関数の役割を果たす。6-31G*と6-31G**基底関数は、4-31G基底関数において重原子の$d$型の基底関数を加えたもの(星印1つ)、および重原子に$d$型の、水素に$p$型関数を加えたもの(星印2つ)によく似ている。経験的には、水素に分極関数を加えるよりも重原子に分極関数を加えるほうがより重要であることがわかっている。したがって、我々の使う一連の基底関数系を、簡単な方から並べると、STO-3G、4-31G、6-31G*、6-31G**となる。
6-31G*と6-31G**基底関数は、6-31G基底に分極関数を加えることによってつくられる。6-31G短縮の形式は、内殻の関数(LiからFに対しては、1$s$のみ)が4項ではなく6項の原始Gauss型関数の短縮であることを除けば、4-31G基底の短縮と同じである。6-31Gの最適化は改めて行われるので、原子価殻の関数は4-31G基底のそれとは同じではないものの、よく似てはいる。内殻が改善されているので6-31G基底は4-31G基底よりも低いエネルギーを与えるが、両者は原子価電子に関する諸量に対してほぼ同じ結果を与える。
6-31G*基底をつくるために6-31G基底に加えられる$d$型関数は、短縮されていない3$d$原始Gauss型関数である。計算を実行する便宜から、1つの原子あたり“6個の3$d$関数”、つまり$3d_{xx},\;3d_{yy},\;3d_{zz},\;3d_{xy},\;3d_{yz}$および$3d_{zx}$を用いる。これらの6個の直交座標系のGauss型関数は、通常の5個の$3d$関数、$3d_{xy},\;3d_{x^2-y^2},\;3d_{yz},\;3d_{zx}$および$3d_{z^2}$と1個の$3s$関数$(x^2+y^2+z^2)$の線形結合である。したがって、6-31G基底に分極関数が加えられた6-31G*基底は1個の$s$型対称性の関数を余分に含んでいることになる。つまり、6-31G*短縮は$(11s\;4p\;1d/4s)/[4s\;2p\;1d/2s]$となって、Hに対しては2個、LiからFまでに対しては15個の関数をもつことになる。C, N, OおよびFに対しては、6個の3$d$関数に対して$\alpha=0.8$のGauss軌道指数が標準値として提案されている。
6-31G**基底は、各Hに対して短縮されていない$p$型原始Gauss型関数を加える点で、6-31G*基底と違っている。これらの$p$型分極関数に対しては$\alpha=1.1$のGauss軌道指数が標準値として提案されている。したがって、6-31G**短縮は$(11s\;4p\;1d/4s\;1p)/[2s\;1p]$となり、水素に対しては5個の基底関数をもっている。
\hrulefill
6-31G*と6-31G**レベルの計算は、多くの場合それより下の階級にあたるSTO-3Gと4-31Gレベルの計算よりも相当に優れた定量的な結果を与える。しかしながら、これらの基底関数系でもまだ不十分な場合には、原子価殻の分割を3倍、4倍としたり、さらにもう1組の分極関数を加えたり、重原子に対して$f$型関数を加え、水素に対してさらに$d$型関数を加えたり、あるいは内殻電子の記述を改良するなどの方策をほどこすことによって改善を図っていくことができる。計算機システムが向上していくにつれて、さらに精度の高い基底関数系が使えるようになるであろう。
\end{document}
|