Master3’s blog

LaTeXやExcelVBAなどの作例集

LaTeX作例23(3.7.2 イオン化ポテンシャル)

  • 量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
  • 今回は、いつもコピペして使っているプリアンブルについておさらいしてみます
  • mathrsfs:筆記体と花文字

  • [dvipdfmx]{graphicx}:graphicx パッケージを用いて画像をとり込む(使ってない!)

  • parskip:段落をインデントする代わりに垂直スペースで区切られている段落レイアウトの実装

  • indentfirst:最初の段落で字下げ

  • amsmath,amssymb:複雑な数式

  • braket:ディラックのブラケット

  • calligra:手書きスタイルの花文字(コマンド: \calligra, \textcalligra

  • calrsfs:花文字(コマンド: \mathcal, \mathrsfs (どちらのコマンドを使っても同じです)

  • mathrsfs:花文字コマンド: \mathscr

  • bm:太字の斜体(ボールドイタリック)でベクトルを表現

  • okumacro:ルビ

  • パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
  • ページ番号は原典と異なります
  • 『新しい量子化学―電子構造の理論入門』

    出版社 ‏ :  東京大学出版会 (1987/7/1)
  • 発売日 ‏ :  1987/7/1
  • 言語 ‏ :  日本語
  • 単行本 ‏ :  303ページ
  • ISBN-10 ‏ :  4130621114
  • ISBN-13 :  978-4130621113
  • [http://:title]

    3.7.2.tex - Google ドライブ

  • \documentclass{jsarticle}

    \usepackage{mathrsfs}

    \usepackage[dvipdfmx]{graphicx}

    \usepackage{parskip}

    \usepackage{indentfirst}

    \usepackage{amsmath,amssymb}

    \usepackage{braket}

     

    \usepackage{calligra}

    \usepackage{calrsfs}

    \usepackage{mathrsfs}

     

    \usepackage{bm}

    \usepackage{okumacro}

    \begin{document}

     

    \subsection*{3.7.2 イオン化ポテンシャル}

     

    \parindent=1zw

     

    Koopmansの定理は、Hartree-Fockの軌道エネルギーをイオン化ポテンシャル及び電子親和力として解釈することに対する理論的な根拠を与えている。私たちの用いる分子の系列では、最低仮想軌道はすべて正の軌道エネルギーをもっている。したがって、Hartree-Fock理論によれば、1個の電子と結合して負イオンとなる分子はこれらの分子の中にはないということになってしまう。Hartree-Fock理論では、電子親和力に対してはほとんどつねに貧しい記述しか与えないので、これ以上仮想軌道のエネルギーについては考えないことにする。

     

    それに対して、占有軌道エネルギーはふつうイオン化ポテンシャルの第1近似として妥当なものである。N$_2$の場合(これは大変興味深い場合だが)を除けば、私たちの扱う分子の系列に対するKoopmansのイオン化ポテンシャルは実験値にかなりよく一致している。

     

    H$_2$分子には占有軌道が1つしかない。種々の基底関数を用いて計算した、この占有軌道のエネルギーの符号を逆にした値が表3.14に、H$_2$のすべての軌道エネルギーが図3.9に示されている。最小基底より大きな基底関数系を使うと、占有軌道エネルギーはSTO-3Gのときより少し下がるけれども、それが4-31Gでも6-31G**でも-0.595 a.u.で変化しない。+0.595 a.u.のイオン化ポテンシャルの計算値は実験値に対してわずか2\%あまりの誤差で一致している。表3.14をはじめ以下に出てくる表においては、すべてのイオン化ポテンシャルは、断熱遷移によるものではなく、垂直遷移によるものである。垂直遷移は終状態と始状態がおのおの平衡核配置にある(断熱遷移過程)のではなく、終状態が始状態と同じ核配置をもつイオン化過程である。Koopmansの定理による値と実験値とのすばらしい一致は、Koopmansの近似では無視されている相関効果と緩和効果が偶然に打ち消し合っていることによる。終状態がH$_2^+$という1電子系の場合には、電子相関はもちろん存在しないが、相関効果は始状態のH$_2$のエネルギーを低下させる。一方、緩和は終状態のH$_2^+$のエネルギーを低下させる。この2つの効果は、このH$_2$の例では非常にうまく打ち消し合うのである。

     

    表3.15には、Koopmansの定理を使って計算したCOの第1、第2イオン化ポテンシャルが出ている。この分子の最高占有分子軌道は、おもにCとOの2$p$軌道の線形結合からなる結合性の5$\sigma$軌道から1電子が抜けると$^2\sum$対称性のイオンを生じる。一方、1$\pi$からのイオン化は$^2\Pi$対称性のイオンを生じる。等電子系のN$_2$でも同様だが、COのイオン化における第1の問題点は最初のイオン化が5$\sigma$か1$\pi$のいずれの軌道から起こるかということである。Hartree-Fock近似においては、5$\sigma$と1$\pi$のどちらの軌道が最高占有軌道かという問題になる。

     

    COに対しては、計算は5$\sigma$軌道が1$\pi$軌道よりも高いエネルギーをもつことを予測していて、これは実験値と一致している。この結果を説明する通常の議論は、CとOの2$p\sigma$軌道は対応する2$p\pi$軌道よりも強く相互作用するから、結合性$\sigma$軌道はふつうなら結合性$\pi$軌道よりも低いエネルギーをもつのだが、5$\sigma$軌道は、CとOの2$s$軌道からなるより低い反結合性4$\sigma$軌道との相互作用によって、“押し上げ”られてしまったとするものである。いずれにせよ、非経験的SCF計算の結果は実験とよく一致している。

     

    COと等電子系のN$_2$は似たような軌道構造を有している。しかしながらCOと違って、イオン化のスペクトルの解釈にKoopmansの定理を用いると基本的な問題点が生じる。表3.16に、N$_2$に対するKoopmansのイオン化ポテンシャルと実験値が出ている。また、図3.10には計算による軌道エネルギーが示されている。注意すべき第1の点は、STO-3Gの計算結果が、より良い基底関数を使った計算およびHartree-Fock極限における計算と一致していないということである。STO-3Gの計算によれば$3\sigma_g$軌道は1$\pi_u$軌道よりも高いエネルギーをもつが、“正しい”Hartree-Fockの結果では1$\pi_u$軌道が最高占有軌道となる。図3.10が示すように、等核分子であるN$_2$は異核分子であるCOと違って、3$\sigma_g$軌道(COでは5$\sigma$軌道に相当)は2$\sigma_u$軌道(COでは4$\sigma$軌道)と異なる対称性をもつので、2つの軌道を引き離す相互作用はCOでは存在するがN$_2$には存在しない。この議論によって、Hartree-Fockの計算による最高占有軌道がN$_2$では$\pi$対称性をもち、COでは$\sigma$対称性をもつことを理解できよう。

     

    表3.16から見てとれる、第2のそしてきわめて重要な点は、“正しい”Hartree-Fockの結果は実験と定性的にさえ一致していないということである。Hartree-Fock分子軌道モデルによれば、1$\pi_u$軌道が最高占有軌道であるが、実験による最低イオン化ポテンシャルは$\Sigma_g$対称性をもったイオン生成物に対応している。これは、イオン化に対する単純な軌道の描像が破綻してしまうことを意味している。Hartree-Fockの描像はあくまでも近似である。N$_2$の場合には、この近似はイオン化現象を定性的に理解するのにさえも十分な精度をもたない。4章と7章で見るように、1個の行列式を使うHartree-Fockモデルを複数個の行列式を使うモデルによって置き換えて相関効果を取り入れると、N$_2$のイオン化スペクトルの理論計算は実験と最終的には一致する。

     

    表3.17には、10電子分子;$\rm{CH_4,\;NH_3,\;H_2O,\;FH}$の第1イオン化ポテンシャルに対する計算値と実験値が示されている。最も大型の基底関数による計算値は実験値に比べると少し大きく、両者の一致は周期表を左から右に進むにつれて少しずつ悪くなっていく。最小基底関数による計算を除いて、正しい順序$\rm{(FH>CH_4>H_2O>NH_3)}$が再現されている。図3.11には、最も大型の6-31G**基底関数を用いて計算された10電子系のすべての占有軌道と第1仮想軌道が示されている。最低の分子軌道は、本質的に重原子の1$s$内殻原子軌道である。2番目に低いエネルギーをもつ分子軌道は、主として重原子の2$s$軌道であって、周期表を左から右にいくほどその傾向が強くなる。FHにおいては、この分子軌道はほとんどF原子の原子軌道であって、多分に内殻の性質を有している。エネルギーの高い方の3つの占有軌道の平均軌道エネルギーも、周期表を左から右に進むにつれて少しずつ減少していくが、これら3つの軌道の個々のエネルギーは系の対称性によって決まってくる。つまり、$\rm{CH_4}$がもし残りの3個の10電子分子と同じ傾向をもつならば、最低のイオン化ポテンシャルをもつはずである。そうなっていないのは、CH$_4$が正4面体の対称性をもつためこれら3つの軌道が縮退しているからである。もしもCH$_4$が正4面体対称性からずれて歪んでいたとすると、第1イオン化ポテンシャルは減少するであろう。

     

    図3.12には、おなじみの4種の標準基底関数を用いて計算したH$_2$Oのすべての軌道エネルギーが示されている。他の例と同様に、この例においても基底関数系がひとたび2倍あるいはそれ以上の大きさをもてば、異なる基底関数系を使っても占有軌道のエネルギースペクトルはほとんど変化していない。最小基底関数系だけは、より質の良い基底関数によって得られるイオン化ポテンシャルとは、はっきり異なる結果を与える。

     

    イオン化ポテンシャルに対するKoopmansの近似は、実験のスペクトルを解釈し同定するための有用な定性的手段を提供してくれる。しかしながら、他のHartree-Fockのすべての結果と同様に、その結果は本当に定量性をもつというわけではなく、いくつかの場合には定性的にも誤った結果しか与えないことがある。

     

    \end{document}

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