LaTeX作例24(3.7.3 平衡核配置)
- 量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
- ポイントとしては、日本語では段落の始まりは全角一文字分、字下げするのが 通常ですが、デフォルトではそうなっていません。
\parindent 1zw
として、インデントの幅を全角一字分に設定します。 - パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
- ページ番号は原典と異なります
-
『新しい量子化学―電子構造の理論入門』
出版社 : 東京大学出版会 (1987/7/1) - 発売日 : 1987/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 303ページ
- ISBN-10 : 4130621114
- ISBN-13 : 978-4130621113
[http://:title]
\documentclass{jsarticle}
\usepackage{mathrsfs}
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
\usepackage{parskip}
\usepackage{indentfirst}
\usepackage{amsmath,amssymb}
\usepackage{braket}
\usepackage{otf}
\usepackage{calligra}
\usepackage{calrsfs}
\usepackage{mathrsfs}
\usepackage{bm}
\usepackage{okumacro}
\begin{document}
\subsection*{3.7.3 平衡核配置}
\parindent=1zw
電子構造の計算の最もふつうな使い道は、分子の平衡核配置を予測することである。Born-Oppenheimer近似においては、核座標の関数としての全エネルギーが、ポテンシャル曲面をなす。このポテンシャル曲面上での核の運動が、起こりうる化学反応、分子振動などを決める。ポテンシャル曲面における最も興味深い場所は停留点である。鞍点は遷移状態に対応し、極小点は平衡核配置に対応する。ポテンシャル曲面の全容を詳しく知りたいところだが、これは核の数が増え、3$N-$6個の自由度が増えるに従って急速に困難なものになる。しかしながら、ほどほどの大きさの分子に対してはポテンシャル曲面の極小点を見いだすことは実行可能であろう。これは分子の化学的構造を計算によって予言するということである。自由度の数が膨大である場合には、特定の構造変数を標準値あるいは予想される値に固定して、信頼できる情報がない構造変数だけを最適化するだけで十分なこともある。
一般に、正確なBorn-Oppenheimer曲面に絶対値として近いポテンシャル曲面を得ることは不可能なので、望みうる最良のポテンシャル曲面は正確な曲面に対してほぼ平行なものである。最小基底によるH$_2$についての議論からわかる(図3.5参照)ように、制限つき閉殻Hartree-Fock計算から得られるポテンシャル曲面は、解離生成物が開殻をもつならば(これはしばしば起こる)、結合が伸びて切れようとしている領域では、正確なポテンシャル曲面に対して、平行でないばかりか、定性的にも似てはいない。したがって、制限つき閉殻Hartree-Fockの手続は、ポテンシャル曲面の広い領域にわたる探査には不適当である。しかしながら、ほとんどの場合、制限つきHartree-Fockポテンシャル曲面は、極小点近くの領域においては正確な曲面に対して“十分に”平行である。したがって、制限つきHartree-Fock計算による平衡核配置は実験値の相当良い近似になる。
平衡核配置を見いだす問題は、数学的には束縛条件のない非線形の極小化問題と等価である。こうした極小化に用いる種々の方法が古くから存在する。効率は悪いが概念的には単純な手続が線式探査法である。この方法では、一時にただ1個の変数だけを変化させて、その変数についての極小値を得る。この操作をすべての変数について、何度も順々に行って、もはや各変数を変化させてもその最適値が変わらなくなるまで繰り返すのである。変数間のカップリングが大きい場合には、この方法は非常にゆっくりとしか収束しないであろう。別のいくつかの方法では、核座標に関するエネルギーの1次微分および可能ならば2次微分を知ることを必要とする。これらは線式探査法よりもずっと優れた方法ではあるけれども、多くの微分の計算を要する。過去においては、これらの微分は数値的に計算されていたが、いまでは効率のよい解析的な手法によって計算することのできるプログラムがいくつもできている。付録Cでは、これらの重要な開発の背景にある基本的な考え方について論じている。
表3.18には、おなじみの標準基底関数系を使って計算されたH$_2$の平衡結合長が出ている。6-31G**基底関数を使って得られた計算による結合長1.385 a.u.は、Hartree-Fock極限の値に近い。結合長における誤差0.016 a.u.(約1\%)は、質の良い非経験的SCF計算に大体期待できる精度である。ふつう絶対誤差の平均は0.02 a.u.から0.04 a.u.程度となる。
表3.19にはCOとN$_2$に対する計算による結合長が、表3.20には$\rm{CH_4,\;NH_3,\;H_2O,\;FH}$に対する計算による結合長が与えてある。Hartree-Fock極限における誤差は、X-H結合距離の誤差よりも2つの重原子間の距離の誤差の方がやや大きい。大多数の他の分子にも同様の傾向が見られるが、Hartree-Fock極限の計算によって予測される結合長は一般には短すぎる。最小のSTO-3G基底関数のような質の低い基底関数によって計算される結合長における平均誤差は、Hartree-Fock極限における基底関数に対する誤差よりも大きく、約0.05 a.u.から0.10 a.u.程度である。
NH$_3$とH$_2$Oの結合角に対する計算値が表3.21に与えてある。Hartree-Fock極限においては、実験値との一致はすこぶる良い(約1$^\circ $から2$^\circ $の誤差)。これらの結合角は、2倍基底関数系レベル(4-31G)の結果では特に良いというほどではなく、分子の結合角を定量的に記述するためには基底関数に$d$型関数が必要であることを示唆している。NH$_3$に対してNの基底関数に$s$型と$p$型関数だけを加えていった極限においては、計算による核配置はなんと平面になってしまうのである。このことは、バランスのとれた基底関数が必要であることを示している。
他のあらゆる計算量と同様に、非経験的SCFの手続から得られる平衡核配置の予測値では実験値との本当に定量的な一致は望みえない。それにもかかわらず、こうしたSCFの平衡核配置は、一連の類似した分子で比較する際にはほとんどつねに正しい傾向を与えてくれる。いいかえると、化学構造の先験的予測はHartree-Fock計算の最も成功している点の1つとなっている。\ruby{Hehre}{ヒーリー}らは、平衡核配置の予測におけるSCF計算の性能を批判的に評価している(この章の終わりの参考文献を参照)。
\renewcommand{\thefootnote}{\fnsymbol{footnote}}\footnote[0]{Hehre, W. J., Radom, L., Schleyer, P. v. R., and Pople, J. A., $Ab\;Initio\;Molecular\;Orbital\;Theory$, Wiley, New York, 1986.
この優れた本には、計算技術と一連のGaussianプログラムソフトウェアに焦点を当てた分子軌道理論の簡単な説明が含まれている。化学的問題への多くの応用が議論されている。第4章では、この本で例示の計算の多くで使用されているSTO-3G, 4-31G, 6-31G*及び6-31G**基底関数系について説明し、また、
現在一般的に使用されている他の基底関数系(3-21Gおよび6-311G**など)についても記述している。}
\end{document}
[http:// :title] |