LaTeX作例30(3.8.5 非制限SCF方程式の解)
- 量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
- ポイントとしては、ダガーの記号(†)や、ノットイコールの記号(≠)が登場します。
- 本文中の太字は行列ベクトルの記号を表しています。
- プリアンブルは全部コピペして使ってるので、かなり余計なものも混ざってます。すいません
- パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
- ページ番号は原典と異なります
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『新しい量子化学―電子構造の理論入門』
出版社 : 東京大学出版会 (1987/7/1) - 発売日 : 1987/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 303ページ
- ISBN-10 : 4130621114
- ISBN-13 : 978-4130621113
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\begin{document}
\subsection*{3.8.5 非制限SCF方程式の解}
\parindent=1zw
非制限SCF方程式を解く手続きは、前に述べたRoothaanの方程式を解くためのものと本質的には変わらない。まず、2つの密度行列$\bm{P}^\alpha$と$\bm{P}^\beta$(したがって$\bm{P}^T$)の初期設定が必要である。簡単な選択の1つはこれらの行列をゼロと置き、$\bm{H}^{\rm core}$を$\bm{F}^\alpha$と$\bm{F}^\beta$両方の初期設定に用いることである。この手続に従うと、反復の1回目では$\alpha$スピンと$\beta$スピンに対して等しい軌道が生じ、制限つきの解が得られる。しかし、$N^\alpha\neq N^\beta$であればその後の反復では$\bm{P}^\alpha\neq\bm{P}^\beta$となって非制限解が生じる。
反復の各回で$\bm{P}^\alpha$と$\bm{P}^\beta$に対する近似が得られると、$\bm{F}^\alpha$と$\bm{F}^\beta$をつくり、2つの一般化された行列固有値問題
\begin{flalign*}
&&\bm{F}^\alpha\bm{C}^\alpha&=\bm{SC}^\alpha\bm{\varepsilon}^\alpha&\text(3.351)\\
&&\bm{F}^\beta\bm{C}^\beta&=\bm{SC}^\beta\bm{\varepsilon}^\beta&\text(3.352)
\end{flalign*}
を$\bm{C}^\alpha$と$\bm{C}^\beta$について解いて、$\bm{P}^\alpha$と$\bm{P}^\beta$に対する新しい近似をつくることができる。上の2つの方程式は連立しており、その相互依存性はFock行列を構成する際に取り込まれるから、各反復段階においてはこれらの方程式を別々に解くことはできるが、つじつまの合った解は$\alpha$方程式と$\beta$方程式に対して同時にしか得ることはできない。行列固有値問題を解く手続は、制限つき閉殻の場合と同じように、規格直交基底関数系への変換行列$\bm{X}$を決めること、$\bm{F}^{\alpha'}=\bm{X}^\dagger\bm{F}^\alpha\bm{X}$をつくること、$\bm{F}^{\alpha'}$を対角化して$\bm{C}^{\alpha'}$を得ること、ついで$\bm{C}^\alpha=\bm{XC}^{\alpha'}$をつくることなどからなる。
\hrulefill
非制限計算の具体例について述べる前に、$N^\alpha=N^\beta$、すなわち通常なら制限つき閉殻波動関数で記述されるような場合のPople-Nesbet方程式の解について重要な点を挙げておく。この場合、Pople-Nesbet方程式は2つの独立な解をもつ可能性がある。第1の解は制限つきの解である。$\bm{P}^\alpha=\bm{P}^\beta=(1/2)\bm{P}$とすると、$\bm{F}^\alpha=\bm{F}^\beta=\bm{F}$となってPople-Nesbet方程式はRoothaanの方程式に一致してしまう。$N^\alpha=N^\beta$のときにはRoothaanの方程式の制限つき解はPople-Nesbetの方程式の1つの解となるのである。この制限つき解は$N^\alpha=N^\beta$である限りつねに存在し、$\bm{P}^\alpha=\bm{P}^\beta$という初期設定が用いられると必ず得られる。しかし$N^\alpha=N^\beta$のときに、この制限つきの解のほかに、第2の、より低いエネルギーをもつ非制限解も存在する場合がある。制限つきの解は、$\alpha$電子の密度が$\beta$電子の密度に等しくなるように束縛されているが、ある状況(これはこの章の最後の節で考える)のもとでは、この束縛を緩めると、$\bm{P}^\alpha=\bm{P}^\beta$に等しくない、より低いエネルギーをもった非制限解が得られる。したがって$N^\alpha=N^\beta$のときには、ある条件のもとではPople-Nesbetの方程式に非制限解である第2の解が存在するのである。この場合、第2の解を見つけるには$\bm{P}^\alpha\neq\bm{P}^\beta$という初期設定を使わねばならず、そうしないと方程式は必然的に制限解を与える。非制限的な初期設定を行ったとしても、反復手続をしていると制限つきの解が出てくる可能性はある。2つの解が存在しうるときには、初期設定の仕方によってどちらの解に収束していくかが決定される。
ふつうは、非制限波動関数は$N^\alpha\neq N^\beta$であるような分子の開殻状態の記述に用いられるから、上の考察は不要である。しかし、後に見るように非制限波動関数を解離の問題の解として用いるときには、2つの解をもちうるという可能性は非常に重要である。
\end{document}
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