Master3’s blog

LaTeXやExcelVBAなどの作例集

LaTeX作例11(3.4.4 Fock行列に対する表式)

  • 量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
  • ポイントとしては、イコールでいくつもつながった式を、イコールの位置でそろえ、かつ、中央ぞろえにするというテクニックです(式(3.148))。
  • ベクトル微分演算子の∇が登場します
  • 式中の文字と変数は、ローマン体と斜体で区別します。式(3.153)を見てみてください
  • プリアンブルは全部コピペして使ってるので、かなり余計なものも混ざってます。すいません
  • パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
  • ページ番号は原典と異なります
  • 『新しい量子化学―電子構造の理論入門』

    出版社 ‏ :  東京大学出版会 (1987/7/1)
  • 発売日 ‏ :  1987/7/1
  • 言語 ‏ :  日本語
  • 単行本 ‏ :  303ページ
  • ISBN-10 ‏ :  4130621114
  • ISBN-13 :  978-4130621113
  • [http://:title]

    3.4.4.tex - Google ドライブ

  • \documentclass{jsarticle}

    \usepackage{mathrsfs}

    \usepackage[dvipdfmx]{graphicx}

    \usepackage{parskip}

    \usepackage{indentfirst}

    \usepackage{amsmath,amssymb}

    \usepackage{braket}

     

    \usepackage{calligra}

    \usepackage{calrsfs}

    \usepackage{mathrsfs}

     

    \usepackage{bm}

    \begin{document}

     

    \subsubsection*{3.4.4 Fock行列に対する表式}

     

    \parindent=1zw

     

    Fock行列$\bm{F}$はFock演算子

    $$f(1)=h(1)+\sum_a^{N/2}2J_a(1)+K_a(1)\eqno(3.147)$$

    の基底$\{\phi_\mu\}$における表現行列で

    \begin{flalign*}

    &&F_{\mu\nu}&=\int d \bm{r}_1\phi_\mu^*(1)f(1)\phi_\nu(1)&\\

    && &=\int d\bm{r}_1\phi_\mu^*(1)h(1)\phi_\nu(1)+\sum_a^{N/2}\int d\bm{r}_1\phi_\mu^*(1)[2J_a(1)-K_a(1)]\phi_\nu(1)&\\

    && &=H_{\mu\nu}^{\rm core}+\sum_a^{N/2}2(\mu\nu|aa)-(\mu a|a\nu)&\text(3.148)

    \end{flalign*}

    である。ここで、核-1電子ハミルトニアン行列の要素は、1個の電子の運動エネルギーと核による引力をあらわす1電子演算子$h(1)$

    $$h(1)=-\frac{1}{2}\nabla_1^2-\sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}-\bm{R}_A|}\eqno(3.149)$$

    積分である。

     

    したがって、核-1電子ハミルトニアン行列の要素は、運動エネルギーの積分

    $$T_{\mu\nu}=\int d\bm{r}_1\phi_\mu^*(1)\left[-\frac{1}{2}\nabla_1^2\right]\phi_\nu(1)\eqno(3.151)$$

    と核からの引力の積分

    $$V_{\mu\nu}^{\rm nucl}=\int d\bm{r}_1\phi_\mu^*(1)\left[-\sum_A\frac{Z_A}{|\bm{r}_1-\bm{R}_A|}\right]\phi_\nu(1)\eqno(3.152)$$

    からなり

    $$H_{\mu\nu}^{\rm core}=T_{\mu\nu}+V_{\mu\nu}^{\rm nucl}\eqno(3.153)$$

    である。基底関数$\{\phi_\mu\}$が決まれば、$T$と$V^{\rm nucl}$を計算し核-1電子ハミルトニアン行列をつくることができる。核-1電子ハミルトニアン行列は全Fock行列と違って、反復計算の間は変わらないから、ただ1度だけ計算すればよい。付録Aには、Gauss型1$s$関数を用いた場合の運動エネルギーと核からの引力の積分の計算が与えられている。

     

    Fock行列に対する表式(3.148)に話を戻して、分子軌道に対する線形展開(

    式(3.133))を2電子項に代入すると

    \begin{flalign*}

    &&F_{\mu\nu}&=H_{\mu\nu}^{\rm core}+\sum_a^{N/2}\sum_{\lambda\;\sigma}C_{\lambda a}C_{\sigma a}^*[2(\mu\nu|\sigma\lambda)-(\mu\lambda|\sigma|\nu)]&\\

    && &=H_{\mu\nu}^{\rm core}+\sum_{\lambda\;\sigma}P_{\lambda\sigma}[(\mu\nu|\sigma\lambda)-\frac{1}{2}(\mu\lambda|\sigma\nu)]&\\

    && &=H_{\mu\nu}^{\rm core}+G_{\mu\nu}&\text(3.154)

    \end{flalign*}

    を得る。ここで、$G_{\mu\nu}$はFock行列の2電子部分で、式(3.154)が最終的なFock行列に対する表式である。これは、基底関数系が与えられ1度計算されてしまうと変化しない1電子部分$\bm{H}^{\rm core}$と、密度行列$\bm{P}$と2電子積分

    $$(\mu\nu|\lambda\sigma)=\int d\bm{r}_1d\bm{r}_2\phi_\mu^*(1)\phi_\nu(1)r_{12}^{-1}\phi_\lambda^*(2)\phi_\sigma(2)\eqno(3.155)$$

    を含む2電子部分$\bm{G}$からなる。2電子積分の数は膨大であって、これらを計算し操作することはHartree-Fock計算における最も困難な問題となっている。

     

    \hrulefill

     

    Fock行列は密度行列に依存し

    $$\bm{F}=\bm{F}(\bm{P})\eqno(3.156)$$

    すなわち展開係数$\bm{C}$に依存する

    $$\bm{F}=\bm{F}(\bm{C})\eqno(3.157)$$

    ので、Roothaanの方程式は非線形である:

    $$\bm{F}(\bm{C})\bm{C}=\bm{SC\varepsilon}\eqno(3.158)$$

     

    したがって、反復計算法によって解かねばならない。いかにしてその反復解法を進めていくかを考える前に、反復の各段階における行列方程式

    $$\bm{FC}=\bm{SC\varepsilon}\eqno(3.159)$$

    の解法について述べる必要がある。$\bm{S}$が単位行列である(つまり、基底関数が規格直交系である)とすると

    $$\bm{FC}=\bm{C\varepsilon}\eqno(3.160)$$

    となって、Roothaanの方程式はふつうの固有値問題の形をとり、$\bm{F}$を対角化することによって固有ベクトル$\bm{C}$と固有値$\bm{\varepsilon}$を得ることができる。しかし、基底関数は一般に非直交系であるので、実際に解くためには、固有値問題$\bm{FC}=\bm{SC\varepsilon}$を書き直しておく必要がある。

     

    \end{document}

    FANZA(ファンザ) 2021年 11 月号 [雑誌]