LaTeX作例1(筆記体、ディラックのブラ・ケット、2.5.2)
- 量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
- ポイントとしては、筆記体のSが登場します。少し特殊なフォントみたいで、本に書いてあった形と同じものを探すのに結構苦労しました。花文字とかいうフォントだったと思います
- ディラックのブラ・ケットベクトルも登場します
- プリアンブルは全部コピペして使ってるので、かなり余計なものも混ざってます。すいません
- パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
- ページ番号は原典と異なります
-
『新しい量子化学―電子構造の理論入門』
出版社 : 東京大学出版会 (1987/7/1) - 発売日 : 1987/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 303ページ
- ISBN-10 : 4130621114
- ISBN-13 : 978-4130621113
-
[http://:title]
-
\documentclass{jsarticle}
\usepackage{mathrsfs}
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}
\usepackage{parskip}
\usepackage{indentfirst}
\usepackage{amsmath,amssymb}
\usepackage{braket}
\usepackage{calligra}
\usepackage{calrsfs}
\usepackage{mathrsfs}
\begin{document}
\subsubsection*{2.5.2 制限つき行列式とスピン対称性を満足する配置}
\parindent=1zw
2.2.1節で見たように、$K$個の規格直交空間軌道の組{$\psi_i$\textbar $i$ = 1, 2,\ldots, $K$}が与えられると、各空間軌道に$\alpha$か$\beta$のスピン関数をかけることによって2$K$個のスピン軌道の組{$\chi_i$\textbar $i$ = 1, 2,\ldots, 2$K$}をつくることができる。
\begin{flalign*}
&&\chi_{2i-1}(\mbox{\boldmath $x$}) &= \psi_{i}({\mbox{\boldmath $r$}})\alpha(\omega) &\\
&&\chi_{2i}(\mbox{\boldmath $x$}) &= \psi_i(\mbox{\boldmath $r$})\beta(\omega) &\text{ i = 1, 2, \ldots, $K$ \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; \;\;\;\;\;\;\; (2.255)}
\end{flalign*}
こうしたスピン軌道は、制限つきスピン軌道と呼ばれ、これらからなる行列式は制限つき行列式と呼ばれる。この行列式では、ある空間軌道$\psi_i$は1個の電子(スピン上向きか下向き)によって占められていることもあり、2個の電子(1つはスピン上向き、もう1つはスピン下向き)によって占められていることもある。1個の電子で占められている空間軌道の数に従って制限つき行列式のタイプを分類するのが便利である。すべての空間軌道が2電子で占められているような行列式は閉殻行列式と呼ばれる(図2.11参照)。開殻とは、1個の電子で占められている空間軌道のことをいう。行列式がもっている開殻の数によって行列式を区別することができる。
\parindent=1zw
閉殻行列式のすべての電子のスピンは対をなしている。したがって閉殻行列式が純粋な1重項であるのは当然である。つまり、問題2.38で示されるように、閉殻行列式は固有値ゼロをもった$\mathcal{S}^{2}$ の固有関数となっている。
$$\mathcal{S}^2 \ket{\psi_i \bar{\psi_i} \psi_j \bar{\psi_j} \cdots }
\; = 0(0+1)\ket{\psi_i \bar{\psi_i} \psi_j \bar{\psi_j} \cdots}\; =0 \eqno(2.256)$$
閉殻行列式の最も簡単な例は、最小基底関数系によるH$_2$のHartree-Fockの基底状態波動関数
$$ \ket{\Psi_0} \; = \ket{\psi_1 \bar{\psi_1} }
\; = [ \psi_1 (1) \psi_1 (2) ] 2^{-1/2} (\alpha (1) \beta (2) - \beta (1) \alpha (2)) \eqno(2.257)$$
である。ここで、スピン部分を行列式の中からくくり出しておいた。この波動関数のスピン部分は、ちょうど2電子系の1重項スピン関数になっている。2電子励起状態$\ket{\Psi_{1 \bar{1}}^{2 \bar{2}} } \; = \;\ket{2\; \bar{2} }$も、もちろん1重項である。
\hrulefill
つぎに開殻行列式を考える。開殻行列式は、図2.12に示したようなすべての開殻電子が平行スピンをもつ場合を除いて、$\mathcal{S}^{2}$の固有関数ではない。例として、最小基底関数によるH$_2$モデルにおいて生じる4つの1電子励起行列式を考える。開殻行列式
$$\ket{\Psi_1^{\bar{2}}} \; = \ket{ \bar{2} \; \bar{1} } \; = -2^{-1/2} [\psi_1 (1) \psi_2 (2) - \psi_2 (1) \psi_1 (2) ] \beta (1) \beta (2) \eqno(2.258a) $$
$$\ket{\Psi_{\bar{1}}^{2}} \; = \ket{ 2 \; 1 } \; = 2^{-1/2} [\psi_1 (1) \psi_2 (2) - \psi_2 (1) \psi_1 (2) ] \alpha (1) \alpha (2) \eqno(2.258b) $$
は、固有値1(1+1) = 2をもった$\mathcal{S}^{2}$の固有関数であって、したがってこれらはともに3重項である。一方、行列式
$$\ket{\Psi_1^2 } \; = \ket{2 \; \bar{1} } \eqno(2.259a)$$
$$\ket{\Psi_{\bar{1}}^{\bar{2}} } \; = \ket{1 \; \bar{2} } \eqno(2.259b)$$
は純粋なスピン状態ではない。しかしながら、これらの行列式の適当な線形結合をとることで、$\mathcal{S}^{2}$の固有関数である、スピン対称性を満足する配置をつくることができる。具体的にはスピン対称性を満足する1重項配置は
\begin{flalign*}
&&\ket{^1 \Psi_1^2 } \: &= 2^{-1/2} ( \ket{ \Psi_{\bar{1}}^{\bar{2}} } + \ket{ \Psi_1^2 } ) &\\
&& &= 2^{-1/2} ( \ket{1 \; \bar{2} } + \ket{ 2 \; \bar{1} } ) &\\
&& &= 2^{-1/2} [ \psi_1 (1) \psi_2 (2) - \psi_1 (2) \psi_2 (1) ] 2^{-1/2} [ \alpha (1) \beta (2) - \beta (1) \alpha (2) ] &\text{(2.260)}
\end{flalign*}
であって、スピン対称性を満足する3重項配置は
\begin{flalign*}
&&\ket{^3 \Psi_1^2 } \: &= 2^{-1/2} ( \ket{ \Psi_{\bar{1}}^{\bar{2}} } - \ket{ \Psi_1^2 } ) &\\
&& &= 2^{-1/2} ( \ket{ 1 \; \bar{2} } - \ket{ 2 \; \bar{1} } ) &\\
&& &= 2^{-1/2} [ \psi_1 (1) \psi_2 (2) - \psi_1 (2) \psi_2 (1) ] 2^{-1/2} [ \alpha (1) \beta (2) + \beta (1) \alpha (2) ] &\text{(2.261)}
\end{flalign*}
である。予想されるとおり、$\ket{^1 \Psi_1^2 }$のスピン部分は閉殻波動関数(式(2.257))のスピン部分に同じである。これは、これらがともに1重項であるからである。
\hrulefill
最小基底関数系のH$_2$に対する上述の結果を一般化しよう。4章と5章において、閉殻Hartree-Fock基底状態
$$\ket{ \Psi_0 } \; = \ket{ 1 \bar{1} \cdots a \bar{a} b \bar{b} \cdots } \eqno(2.262)$$
からの1電子、および2電子励起の結果生じる1重項のスピン対称性を満足する配置を使う。スピン対称性を満足する配置をなすような、1電子、および2電子励起行列式の適当な線形結合を見いだす方法はこの本の範囲を超えているので、単に結果だけを述べることにする。スピン固有関数を構成するためには、たくさんの方法があるが、これらの方法の多くについての明快な記述がPauncz(R.Paunz, Spin Eigenfunctions, Plenum, New York, 1979)によってなされている。
1個の電子が空間軌道$\psi_a$から空間軌道$\psi_r$に上がった1電子励起に対応する1重項のスピン対称性を満足する配置は
$$\ket{^1 \Psi_a^r } \; = 2^{-1/2} ( \ket{\Psi_{\bar{a}}^{\bar{r}} } + \ket{\Psi_a^r } ) \eqno(2.263)$$
である。もし、$a$ = 1かつ$r$ = 2であるならば、この表式は最小基底関数系による結果(2.260)式になる。
2電子励起に対しては、1重項のスピン対称性を満足する、たくさんの相異なる配置が生じうる。これらを、表2.7に示した。2個の電子がともに同じ空間軌道$a$から同じ空間軌道$r$に上がった場合のスピン対称性を満足する配置は$\ket{^1\Psi_{a a}^{r r} }$である。これは、最小基底関数H$_2$の2電子励起状態$(\ket{\Psi_{1 \bar{1}}^{2 \bar{2}} } \; = \ket{ 2 \; \bar{2} } )$の一般化になっている。2個の電子が同じ空間軌道$a$から上げられるが、相異なる空間軌道$r$, $s$に入るような場合、適切なスピン対称性を満足する配置は$\ket{^1 \Psi_{a a}^{r s} }$である。また、2個の電子が相異なる空間軌道$a$, $b$から上げられるが、同じ空間軌道$r$に入る場合、適切なスピン対称性を満足する配置は$\ket{^1\Psi_{a b}^{r r} }$である。最後に、2個の電子が相異なる空間軌道$a$, $b$から上げられて、相異なる空間軌道$r$, $s$に入る場合、2つの線形独立な、スピン対称性を満足する配置$\ket{^A \Psi_{a b}^{r s} }$と$\ket{^B \Psi_{a b}^{r s} }$を生じる。
\end{document}
|