Master3’s blog

LaTeXやExcelVBAなどの作例集

LaTeX作例32(3.8.7 解離の問題とその非制限法による解)

  •  量子化学に関する本を引用し、僕が書いたLaTeXの作例を紹介します
  • ポイントとしては、数学でよく目にするLimitが登場するところです。textで挿入して、下の条件の部分はundersetで書いています。
  • プリアンブルは全部コピペして使ってるので、かなり余計なものも混ざってます。すいません
  • パッケージは基本的にデフォルトで入ってるやつが使われていると思います(たぶん)
  • ページ番号は原典と異なります
  • 『新しい量子化学―電子構造の理論入門』

    出版社 ‏ :  東京大学出版会 (1987/7/1)
  • 発売日 ‏ :  1987/7/1
  • 言語 ‏ :  日本語
  • 単行本 ‏ :  303ページ
  • ISBN-10 ‏ :  4130621114
  • ISBN-13 :  978-4130621113

    [http://:title]

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  • \documentclass{jsarticle}

    \usepackage{mathrsfs}

    \usepackage[dvipdfmx]{graphicx}

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    \usepackage{otf}

     

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    \usepackage{calrsfs}

    \usepackage{mathrsfs}

     

    \usepackage{bm}

    \usepackage{okumacro}

    \begin{document}

     

    \subsection*{3.8.7 解離の問題とその非制限法による解}

     

    \parindent=1zw

     

    非制限波動関数は、ふつうは前の節の例に出てきたような開殻状態(2重項、3重項など)の記述に用いられる。しかし、特定の状況のもとでは、閉殻1重項と考えられている状態の記述にも非制限波動関数を用いるほうが適当である。たとえばH$_2$の場合、基底状態では電子が対をなす制限つきの形式が通常の記述法である。すぐあとで見るように、平衡核間距離付近ではこれがHartree-Fock法による唯一の適切な記述である。一方、非常に大きな結合長のところでは、実質的には2つの独立な水素原子の記述をしなければならない。適切な記述のためには、1個の電子が1つのH原子に、もう1個の電子はもう1つのH原子にという具合に、2個の電子が全く異なった空間分布をもたなければならない。2個の電子を両方とも同じ空間軌道に詰めるという制限つき波動関数では、これの電子は全く同じ空間分布をもってしまう。したがって、平衡核配置では制限つき波動関数が必要で、大きい結合長では非制限波動関数が必要となるのである。ある意味で私たちは、ケーキを食べることも持っていることもできる(私たちはその両方の目的を非制限法により達成することができる)。前の節で議論したように、$N^\alpha=N^\beta$のときPopleとNesbetの非制限方程式には2つの解が存在しうる。Roothaanの方程式の制限つき解は、必ずPople-Nesbetの方程式の解になる。残っているのは、制限解よりエネルギーの低いような真に非制限的である第2の解があるかどうかを知ることだけである。通常の核配置では、非制限解が存在しない。しかし、HeH$^+$(HeH$^+\to$ He + H$^+$)の結合とは違い、H$_2$(H$_2\to$ H + H)の結合のように均等に解離する結合については、大きな結合長のところでつねに上述の非制限解が存在する。この非制限解は、結合の解離の際に電子が対をなさなくなっていく様子をうまく記述する。これを具体的に見るために、H$_2$の最小基底モデルに対する波動関数を調べてみよう。

     

    ${\rm CH_3,\;N_2^+,\;O_2}$のときと同じように、最小基底STO-3Gを用いて、Pople-Nesbetの方程式を、H$_2$に対して数値的に解くことはできる。反復によって制限解ではなく非制限解が得られる場合は、適切な制限されていない初期設定が必要である。しかし、Pople-Nesbet行列方程式の解を数値的に追うよりも、解析的に扱って考えるほうが、制限つき波動関数から非制限波動関数への移行がより明瞭となろう。

     

    最小基底H$_2$の制限つき分子軌道は対称性によって決まり

    \begin{flalign*}

    &&\psi_1&=\left[2(1+S_{12})\right]^{-1/2}(\phi_1+\phi_2)&\text(3.356)\\

    &&\psi_2&=\left[2(1-S_{12})\right]^{-1/2}(\phi_1-\phi_2)&\text(3.357)

    \end{flalign*}

    で与えられる。最小基底関数系によるモデルでは、変化させることのできる基底関数の係数は2つしかなく、分子軌道は規格化されていなければならないため、自由度はただ1つである。非制限解は、制限つきの解と違って対称性によっては決まらない。この1つの自由度を非制限解に取り入れる便利な方法は、占有非制限分子軌道$\psi_1^\alpha$と$\psi_1^\beta$を、対称性から決められた制限軌道$\psi_1$と$\psi_2$のつぎのような線形結合として書くことである。

    \begin{flalign*}

    &&\psi_1^\alpha&={\rm cos}\;\theta\psi_1+{\rm sin}\;\theta\psi_2&\text(3.358)\\

    &&\psi_1^\beta&={\rm cos}\;\theta\psi_1-{\rm sin}\;\theta\psi_2&\text(3.359)

    \end{flalign*}

    ここで自由度は、角度$\theta$によってあらわされている。$\theta$の値は0°から45°までを考えれば十分で、$\theta=0$は制限つきの解$\psi_1^\alpha=\psi_1^\beta=\psi_1$に対応し、ゼロでない$\theta$の値は非制限解$\psi_1^\alpha\neq\psi_1^\beta$に対応する。非制限仮想軌道は

    \begin{flalign*}

    &&\psi_2^\alpha&=-{\rm sin}\;\theta\psi_1+{\rm cos}\;\theta\psi_2&\text(3.360)\\

    &&\psi_2^\beta&={\rm sin}\;\theta\psi_1+{\rm cos}\;\theta\psi_2&\text(3.361)

    \end{flalign*}

    で与えられる。

     

    \hrulefill

     

    基底関数系展開式((3.356)と式(3.357))を上の4式に代入すると、非制限分子軌道の基底関数系展開が得られる。占有分子軌道は

    \begin{flalign*}

    &&\psi_1^\alpha&=c_1\phi_1+c_2\phi_2&\text(3.362)\\

    &&\psi_1^\beta&=c_2\phi_1+c_1\phi_2&\text(3.363)

    \end{flalign*}

    で与えられるが、これから先はこの2式だけを考えればよい。ここで

    \begin{flalign*}

    &&c_1&=\left[2(1+S_{12})\right]^{-1/2}\cos{\theta}+\left[2(1-S_{12})\right]^{-1/2}\sin{\theta}&\text(3.364)\\

    &&c_2&=\left[2(1+S_{12})\right]^{-1/2}\cos{\theta}-\left[2(1-S_{12})\right]^{-1/2}\sin{\theta}&\text(3.365)

    \end{flalign*}

    である。

     

    非制限占有分子軌道の定義(式(3.358)と式(3.359))で$\psi_1$と$\psi_2$の混合を許したことによって、$\psi_1^\alpha$と$\psi_1^\beta$の基底関数系展開における$\psi_1$と$\psi_2$の重みに式(3.362)と式(3.363)によって示される変化が許された。$\theta=0$のとき、波動関数はちょうど$c_1=c_2=\left[2(1+S_{12})\right]^{-1/2}$の制限つき波動関数となる。$\theta$がゼロから増えていくと、$c_1$は大きく、$c_2$は小さくなっていき、いいかえれば、$\psi_1^\alpha$では$\psi_1$の重みが、$\psi_1^\beta$では$\psi_2$の重みが大きくなっていく。大きい核間距離では$S_{12}=0$になるが、そのときは$\theta=45$°で、したがって$c_1=1,\;c_2=0$、つまり

    \begin{equation*}

    \left.

    \begin{aligned}

    \psi_1^\alpha &\equiv\phi_1 \\

    \psi_1^\beta &\equiv\phi_2

    \end{aligned}

    \right\}

    \quad \theta=45°,\quad S_{12}=0\eqno(3.366)

    \end{equation*}

    である。これは、2つの分離したH原子に対して私たちの求めていた結果($\alpha$スピンをもった電子は$\phi_1$に、$\beta$スピンをもった電子は$\phi_2$に)となっている。

     

    このように最小基底H$_2$の分子軌道は1個の変数$\theta$でその性格が変化する。一方の極限としての$\theta=0$は、占有分子軌道で$\phi_1$と$\phi_2$が等しい重みをもち制限つきの解に対応している。もう一方の極限$\theta=45$°は、孤立水素原子をあらわす非制限解に対応している。$\theta$の中間的な値は、$\psi_1^\alpha$がおもに$\phi_1$、$\psi_1^\beta$がおもに$\phi_2$である非制限解に対応する。図3.16に$\theta$の関数としての非制限分子軌道の定性的な振舞を示した。この図は最小基底関数系を用いて導かれたものではあるが、これらの分子軌道の形は、H$_2$については基底関数系によらず定性的に正しい。

     

    H$_2$のような閉殻分子の基底状態について、解離過程の正しい定性的な振舞を示す非制限波動関数を求めることが可能であるらしいことがわかった。残るのは、これらの非制限解とHartree-Fock方程式の解の関連を見つけることである。Pople-Nesbetの方程式を解いたときに、ゼロでない$\theta$の値は得られるのか。この問題を調べるためには、$\theta$の関数としてのエネルギーを求める必要がある。

     

    H$_2$の1個の非制限行列式波動関数

    $$\ket{\Psi_0}=\ket{\psi_1^\alpha(1)\bar{\psi}_1^\beta(2)}\eqno(3.367)$$

    の電子エネルギーは、各電子の運動エネルギーと核からの引力、それに2つの電子間のクーロン斥力の和になる。すなわち

    \begin{flalign*}

    &&E_0&=\braket{\Psi_0|\mathcal{H}|\Psi_0}=h_{11}^\alpha+h_{11}^\beta+J_{11}^{\alpha\beta}&\\

    &&&=(\psi_1^\alpha|h|\psi_1^\alpha)+(\psi_1^\beta|h|\psi_1^\beta)+(\psi_1^\alpha\psi_1^\alpha|\psi_1^\beta\psi_1^\beta)&\text(3.368)

    \end{flalign*}

    である。この表式に展開式(3.358)と式(3.359)を代入すると、$\theta$の関数としての電子エネルギーを、制限つきの軌道による分子積分によって書くことができて

    \begin{flalign*}

    &&E_0(\theta)=&2\cos{^2\theta h_{11}}+2\sin{^2\theta h_{22}}+\cos{^4\theta J_{11}}&\\

    &&&+\sin{^4\theta J_{22}}+2\sin{^2\theta}\cos{^2\theta}(J_{12}-2K_{12})&\text(3.369)

    \end{flalign*}

    となる。$\theta=0$のとき、この非制限エネルギーは制限つきのエネルギーに戻って

    $$E_0(0)=2h_{11}+J_{11}\eqno(3.370)$$

    となる。非制限エネルギーの$\theta$に関する1次微分

    \begin{flalign*}

    &&dE_0(\theta)/d\theta=&4\cos{\theta}\sin{\theta}[h_{22}-h_{11}+\sin{^2\theta J_{22}}-\cos{^2\theta J_{11}}&\\

    &&&+(\cos{^2\theta}-\sin{^2\theta})(J_{12}-2K_{12})]&\text(3.371)

    \end{flalign*}

    である。

     

    Pople-Nesbetの方程式を解く、すなわち非制限エネルギーが停留値となる$\theta$の値を見つけるために、非制限エネルギーの1次微分をゼロとおく。

    $$dE_0(\theta)/d\theta=AB=0\eqno(3.372)$$

    ここで

    \begin{flalign*}

    &&A&=4\cos{\theta}\sin{\theta}&\text(3.373)\\

    &&B&=h_{22}-h_{11}+\sin{^2\theta J_{22}}-\cos{^2\theta J_{11}}

    +(\cos{^2\theta}-\sin{^2\theta})(J_{12}-2K_{12})&\text(3.374)

    \end{flalign*}

    である。したがって、エネルギーが停留値となるには、次の2つの場合が考えられる。

    \begin{enumerate}

    \renewcommand{\labelenumi}{(\arabic{enumi})}

    \item A=0。このときは制限つきの解である。$\theta=0$であれば、この条件は満たされる。

    \item B=0。このときは非制限解である。この条件が満たされ、非制限波動関数が存在するのは

    $$\cos{^2\theta}=\eta\eqno(3.375)$$

    に解が存在するときのみである。ここで

    $$\eta=(h_{22}-h_{11}+J_{22}-J_{12}+2K_{12})/(J_{11}+J_{22}-2J_{12}+4K_{12})\eqno(3.376)$$

    である。

    \end{enumerate}

    上の方程式は式(3.374)の$B$をゼロとおけば得られる。この方程式が解をもつのは、核間距離と基底関数、つまり分子積分$h_{11},\;h_{22}$などに対して、$\eta$が1と0の間の値($0\leq\eta\leq1$)をもつときのみである。

     

    \hrulefill

     

    解析をさらに進め、制限つきの解($\theta=0$)の性質を調べるために、エネルギーの$\theta=0$での2次微分

    \begin{flalign*}

    &&\left[d^2E_0(\theta)/d\theta^2\right]_{\theta=0}&=E_0''(0)=4(h_{22}-h_{11}-J_{11}+J_{12}-2K_{12})&\\

    &&&=4(\varepsilon_2-\varepsilon_1-J_{12}-K_{12})&\text(3.377)

    \end{flalign*}

    の値を計算する。制限つきの解の性質は、この2次微分によって決められる。$E_0''(0)>0$のとき、エネルギーは極小である。$E_0''(0)<0$のとき、エネルギーは極大である。$E_0''(0)=0$、すなわち

    $$h_{22}-h_{11}=J_{11}-J_{12}+2K_{12}\eqno(3.378)$$

    であれば、制限つきの解は鞍点となる。この鞍点の条件を式(3.376)に代入すると、鞍点では$\eta=1$であることがわかる。付録Dの分子積分を使えば$E_0''(0)$と$\eta$の、結合長の関数としての振舞を調べることができる。短い結合長のところでは、$E_0''(0)>0$かつ$\eta>1$である。結合が伸びるにつれて$E_0''(0)$と$\eta$はともに単調に減少し、$R=\infty$で$E_0''(0)=-1/2(\phi_1\phi_1|\phi_1\phi_1),\;\eta=1/2$となる。$R=2.3$ a.u.近傍にある遷移点で、2次微分$E_0''(0)$は負になり、同時に$\eta$は1より小さくなる。したがって、解の振舞はつぎのようになる。$\eta>1$の短い結合長のところでは、制限つきの解が真の極小となり、非制限解は存在しない。結合長が増大するにつれて$\eta$は1になるまで減少し、ほぼ2.3 a.u.の距離でエネルギーに鞍点が生ずる。この乗り移り点は非制限解のはじまりを意味するものである。これよりも大きい結合長では、制限つきの解は実際、図3.17に示すように極大のエネルギーをもつ。非制限解が存在するとき($\eta\leq1$)には、$\eta$の値を$\cos{^2\theta}$に等しいとおくことができる。結合長が徐々に大きくなっていくと、$\theta$は孤立水素原子に対応する45°の極限に向かう。STO-3Gを使ったH$_2$に対する2つの解を示すポテンシャル曲線を図3.18に示した。非制限エネルギーは、同じ基底関数系を使って計算した2つの水素原子の極限$2(\phi_1|h|\phi_1)$に滑らかに向かっている。制限つきエネルギーは正しい結果より1/2$(\phi_1\phi_1|\phi_1\phi_1)$だけ上にある極限へ向かう。図3.18には、\ruby{Kolos}{コロス}と\ruby{Wolniewicz}{ヴォルニェヴィツ}の実質的に正確な結果\renewcommand\thefootnote{\arabic{footnote})}\footnote[5]{W.Kolos and L.Wolniewicz,Improved theoretical ground-state energy of the hydrogen molecule,$J.Chem.Phys.\bm{49}:404(1968)$}も示してある。図に用いた水素原子のエネルギー($-0.4666$と$-0.5$)は、それぞれの方法で使われた基底関数系で計算したものである。したがって曲線は両方とも大きい$R$ではゼロに向かう。6-31G**基底関数系を用いたときのエネルギー曲線は図3.19に示した。

     

    非制限波動関数を使って得たH$_2$の“正しい”解離も、欠点をもたないわけではない。この非制限波動関数は、本来1重項になるべきなのに、1重項にならないのである。エネルギーは正しい極限へ向かうが、これから見るように、波動関数はそうならない。$R\to\infty$の極限では、分子軌道は$\psi_1^\alpha=\phi_1,\;\psi_1^\beta=\phi_2$となり、式(3.367)の1個の非制限行列式$\ket{\Psi_0}$は

    $$\underset{R\to\infty}{\text{limit}}\ket{\Psi_0}=\ket{\phi_1(1)\bar{\phi}_2(2)}\eqno(3.379)$$

    となる。しかし、これは電子が異なる空間軌道$\phi_1$と$\phi_2$を占有するときの正しい1重項波動関数ではない。式(2.260)からわかるように、正しい1重項波動関数

    $$\underset{R\to\infty}{\text{limit}}\ket{\Phi_0}=2^{-1/2}\left[\ket{\phi_1(1)\bar{\phi}_2(2)}+\ket{\phi_2(1)\bar{\phi}_1(2)}\right]\eqno(3.380)$$

    となるべきである。したがって非制限の取扱いは、軌道に関しては正しいが、全波動関数については正しくない。この問題に対するもう1つの見方は、非制限分子軌道の展開式(3.358)と式(3.359)を1個の行列式$\ket{\Psi_0}$に代入し、これを

    \begin{flalign*}

    &&\ket{\Psi_0}&=\ket{\psi_1^\alpha\bar{\psi}_1^\beta}&\\

    &&&=\cos{^2\theta}\ket{\psi_1\bar{\psi}_1}-\sin{^2\theta}\ket{\psi_2\bar{\psi}_2}&\\

    &&&\;\;\;\;-(2)^{1/2}\cos{\theta}\sin{\theta}\left[\ket{\psi_1\bar{\psi}_2}-\ket{\psi_2\bar{\psi}_1}\right]/(2)^{1/2}&\\

    &&&=\cos{^2\theta}\ket{\psi_1\bar{\psi}_1}-\sin{^2\theta}\ket{\psi_2\bar{\psi}_2}-(2)^{1/2}\cos{\theta}\sin{\theta}\ket{^3\Psi_1^2}&\text(3.381)

    \end{flalign*}

    と展開することである。ここで、$\ket{^3\Psi_1^2}$は式(2.261)で定義した1電子励起3重項配置である。閉殻行列式$\ket{\psi_1\bar{\psi}_1}$と$\ket{\psi_2\bar{\psi}_2}$はいうまでもなく1重項である。したがって、H$_2$の基底状態に対する1個の非制限行列式は純粋な1重項ではなく、3重項が混入しているのである。2電子励起行列式$\ket{\psi_1\bar{\psi}_1}$と$\ket{\psi_2\bar{\psi}_2}$の混ざり合いは、正しい解離をもたらしているが、最終的な波動関数が1個の行列式としてあらわされるためには3重項の混入が必要である。$R\to\infty$では、3重項の混入は、これが波動関数の50%を占めるまで増加する。

    $$\underset{R\to\infty}{\text{limit}}\ket{\Psi_0}=\frac{1}{2}\left[\ket{\psi_1\bar{\psi}_1}-\ket{\psi_2\bar{\psi}_2}-(2)^{1/2}\ket{^3\Psi_1^2}\right]\eqno(3.382)$$

    非制限波動関数を使うと正確な解離エネルギーを与えるにもかかわらず、その波動関数は貧弱で、1個の非制限行列式を解離極限付近で配置間相互作用あるいは摂動計算に対する出発点として使うことは適当ではない。

     

    \hrulefill

     

    私たちは、制限つきHartree-Fock解離の問題をH$_2$の最小基底モデルについてのみ議論してきた。しかし、ここで述べた考え方は、H$_2$にのみ限定されるものではなく、結合が伸びているときにはほかの閉殻系でもたいへんよく似た効果が生じる。H$_2$では平衡核間距離を越えたところではじまるが、実験で観測される核配置でも非制限解が存在することもある。私たちの行った解析を拡張することによって、閉殻制限つきの解よりも低いエネルギーをもった非制限解が存在するときの一般的条件を導くことが可能である(Thouless, 1961)。

    \renewcommand{\thefootnote}{\fnsymbol{footnote}}\footnote[0]{Thouless, D. J., $The\;Quantum\;Mechanics\;of\;Many-Body\;Systems,$ Academic Press, New York, 1961.

     

    制限つき波動関数から非制限波動関数への移行は、Hartree-Fockの安定性問題の一部であり、乱雑位相近似と密接に関連している。この安定性問題に関する最初の情報源がこの本である。}

     

    \end{document}

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    :title]